平設計事務所 TAIRA Architects Office Ltd.

Special Issue 特集記事

「病院」から「健院」へ
これからの病院建築の考え方

インテリア
設備メーカー各社のデザイナーとのコラボレーションで完成したインテリアデザイン

江東リハビリテーション病院のインテリアは、床材は田島ルーフィング、家具はイトーキ、カーテンはアスワンを採用。従来のプロジェクトでは、インテリアメーカーが決まった後は、床、家具、カーテンなど、それぞれのエレメントごとに商品を選び、家具は工事業者と連携して進めるが、今回は、全体のコーディネートに重点をおくために、各メーカーのデザイナーに参加を依頼。各社の提案や部屋ごとのテーマを、メンバー全員で共有しながら創り上げていったのが最大の特徴である。
デザインに着手する前にまず、回復期リハビリテーション病院の概要、カマチ病院グループの理念やこれまでの実例などをメンバーと共有し理解を深めた。さらに、デザイン構想は、私がこれまで手掛けた作品も参考に進められた。インテリア計画のカギとなったのは、つくり手と使い手がコミュニケーションを密にして、全員が納得しながら進められたことだ。複数の企業のコラボレーションにより、使い手にとって本当に心地よいインテリアが実現した。

家具・インテリア

家具は、規格製品をリストアップするだけではなく、現場の必要に応じて、多くのアイテムを新たにデザインした。病院のインテリアは、患者や看護師など、さまざまな使い手のための配慮が求められる。例えばカウンターひとつをとっても、高さをどうするか、素材や仕上は、というように、規格品では対応しきれないケースも数多い。そこで、デザイナーには実際の現場を見てもらい、看護師の意見を採り入れながら、デザインワークを進めていった。その効果として、少し奇抜と思われるデザインが好評だったり、平面図では不安を感じたものが納めてみるとしっくりきたり、現場の生の声を採り入れることでさまざまな発見があり、使い手にとって本当に心地よい家具を納めることができた。 また、イトーキは、これまでに公共施設の家具を数多く手掛けていることから、車イス使用に必要な寸法など、医療・福祉施設に対する予備知識があったことも、提案がスムーズに進んだひとつの要因である。

床材

床材は、患者の気分が明るくなる様、明るい色をベースに発色のよい色合いの『パルティ』や『マティル』をアクセントとしてデザインした。リハビリ病院では、歩行訓練のために直線で10m以上の距離が要求される。そのスペースを利用して歩行訓練の幅を広げるために、床材の貼り方やパターンについて、理学療法士の意見も採り入れた。
1・2階には田島ルーフィングのオリジナルのUDフロアを採用。エレベーターホールは、色や柄を変えることで空間の認知性を高めるウェイファインディングの考え方に即して、フロアごとに床材の色を変えた。これからの病院インテリアデザインは、明るさと楽しさをもっと取り入れるべきである。床材は自然光や照明によっても見え方が変わる。また、病院の場合は、ストレッチャーや医療機器などが頻繁に通るため耐久性も必要だ。さらに、患者が安心・安全に歩ける様に、滑りにくく、歩行の妨げにならない施工技術も求められる。これらの要件を満たした上で、明るさと楽しさをいかに表現するかが、デザイナーの腕の見せ所であった。

カーテン

病院の内装は冷たく画一的なイメージがある。それは全フロアを同じデザイン、カラーで均一につくっているからである。その結果、非常に味気ない空間になってしまうというわけだ。私が請け負った病院設計では、全体の統一感を保ちながら、部屋ごとに家具やカーテンを変えて異なる雰囲気をつくり、画一的な印象にしないことを前提としている。
この手法に従うために、一般的には最終段階で選ぶアイテムであるカーテンも、計画の早い段階から検討を始めた。イメージはホテルのカーテン。遮光や遮熱など必要な機能は押さえながら、患者が癒される優しい美しさを重視した。
レースカーテンは外から見えにくいミラーカーテンを採用。部屋のカーテンは透け感のあるオパール加工を施したものや装飾性の高いレースなど、内装に合わせて生地やデザインを選択。病院ではあまり見かけないボックスカーテンなども、内装に合わせて採り入れた。

ドア

急性期の病院はできるだけ在院日数を減らす取組を進めている。だが、回復期リハビリテーション病院は、治療という医療行為だけではなく、離床から始まり日常生活ができるまでリハビリをする施設であるため、1ヵ月から長い場合は半年もの長期療養になることもある。故に、入院というよりも生活する施設としての役割が大きく、インテリアには生活空間としての使い心地の良さが求められる。
そこで、病室のドアには「使い心地」を選択基準に、病院ドアの代名詞ともいわれる三和シヤッターの『スムード』を採用した。「軽い開閉操作で誰でも開けやすい」「デッドスペースができず、スペースを有効活用できる」「床がフラットになので大きな台車や車イスの通過も安心」「開閉音が静か」などの特性を持つドアだ。ここでは、高級感のある木質系の化粧鋼板仕様で、病院らしくない病院を演出した。